７月２６日１４時２０分に放送されたNHK Eテレの「NHK高校講座」でジョジョの奇妙な冒険の作者で有名な漫画家の荒木飛呂彦先生が「漫画はやっぱり面白い～人物～」という内容で出演され講師を務められました。
漫画を作る上で荒木先生は一番重要なのはキャラクターであり、その上で荒木流キャラクター作りや考え方を教えていらっしゃいました。
NHK Eテレの「NHK高校講座」のサイトで動画が見られます。

【「ジョジョの奇妙な冒険」荒木飛呂彦先生が「NHK高校講座」に芸術講師で出演 | CUTPLAZA DIARY】

荒木飛呂彦先生「漫画に必要なものってなんだと思いますか？」

『世界観』
『メッセージ性』
荒木飛呂彦先生「メッセージ性、いいですねぇ。テーマ性とかそういう事ですか？」
『魅力的なキャラクター』
荒木飛呂彦先生「キャラクター」
－たくさん挙がったけど、一番重要なのがキャラクターなんです。

－魅力的なキャラクターがいれば、自然と漫画は出来上がる？

【NHK高校講座 | 芸術（美術Ⅰ／書道Ⅰ） | 第15回 美術(8) 漫画はやっぱりおもしろい　～人物～】

放送日7/26
第15回 美術(8)
漫画はやっぱりおもしろい　～人物～
講師：漫画家　荒木 飛呂彦

漫画は今や日本を代表するアートだ。今回、講師を務めるのは漫画家の荒木飛呂彦さん。独自の世界観を土台に奇抜なストーリーを立ち上げ、魅力的なキャラクターを活躍させる漫画でしかできない表現を追求してきた。代表作の「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの連載は25年を超え、現在も絶大な人気を誇る作家だ。荒木さんによれば、漫画を描くうえで一番大切なことはキャラクター作り。今回のワークショップでは魅力的なキャラクター作りを通して漫画の面白さを探っていく。

荒木飛呂彦先生「ジョジョの場合はですね、世界観とキャラクターを同時に、こう作っていくと、プロットが自然に出来ていくっていう。メッセージ性っていうのは、ここから(世界観とキャラクター)滲み出て来るっていうか、背後に隠してるっていう」

荒木飛呂彦先生「今日はこの人達(標識)を擬人化していきたいです。」

－無機物な標識から生き生きとしたキャラクターが作れるかな？

－荒木作品のテーマは“人間賛歌”だと言います。

『人間賛歌ってどういう・・・？』
荒木飛呂彦先生「要するに人間中心に描くっていうことは、その主人公が道具を使って、なにか問題を解決したりとか、あるいは急に神様が出てきて助けてもらったりとか、そういう事をしないっていうことです。あくまでも自分で切り開いて、自分の知恵や心を使って、物事に立ち向かっていく。なにかこう、ルネッサンスっていう思想みたいな物の影響なんですよね。人間は素晴らしいんだって言うね。人間を描くのが一番面白いと思うし、みんなが興味あるっていうのは人物だと思うんですよね。という意味でキャラクターかなと」
『キャラクターがたとえ人間じゃなくても、そういった性格があったら』
荒木飛呂彦先生「そうですね、そこに何か植えつけてあげれば、全てのキャラクターが動いてくると思います。僕の場合はそのキャラクターに、前向きな行動理由みたいな物をつけていくんですよ。読んで力が湧いていただくというか、そう言うのがやっぱり描きたい」

－荒木流キャラクター作りの伝授です。
荒木飛呂彦先生「あのー、僕はいっつもこの身上調査書っていうのにキャラクターを書いていくんですけど」

キャラクター身上調査書の全項目

名前
年齢
性別
身長
体重
生年月日・星座
出身地・国籍
血液型
髪の色
利き腕
その他の身体的特徴
父親はどんな人
母親はどんな人
姉妹・兄弟・祖父・祖母
将来の夢
口ぐせ・くせ
恐怖
尊敬する人
嫌いな人・恨んでいる人
その他の性格的特徴(長所・短所)
親友
ボーイフレンド・ガールフレンズ
受賞歴・犯罪歴・学歴・資格
職業・学校

経済状態
好きな食べ物
嫌いな食べ物
特技
特殊能力
必殺技
きめゼリフ
その他
好きな音楽
アイドル・芸能人
本
映画
言葉
花
アクセサリー・髪型
ファッション
コレクション
色
香り
芸術
関係している組織・会社・犯罪など
スポーツ
乗り物
格闘技
好きな場所・土地
お酒・タバコ
ペット

－キャラクター作り秘伝の書！項目は60近く。疑問の家族関係から、「くせ」や「恐怖」なんて欄も。


荒木飛呂彦先生「なんか一つの流れがあるっていうか、例えば、運動が駄目なキャラクターで登場しているのに、戦ってているとき急に強くなったりするようなキャラって漫画にいるんですけど、作者が多分ね心がブレてるんですよね。そういうのを防ぐっていう為に設計図というかそういうものなんです」

－荒木さんも「止まれ」の標識から新しいキャラクターを作ってくれました。

荒木飛呂彦先生「トビーって奴です。こいつがトビーで、他人の動きを道路上で一瞬だけ止めて、特技が書道二段なので、一瞬だけ止めたときに落書きをしてイタズラをするという奴です。重要なのはね、弱点なんですよね。恐怖っていうの。トビーは水で濡れることがキライで、小さい時、水で溺れた時があって、それが嫌なんですね。なんかそういう『止まれ』とかね、そういう字は嫌いなんですね。要するにあんまり自分がすきじゃない人なのかなぁみたいな。そういうキャラクターなんです。トビーのキャラクターが実際に自分の頭の中にいるように思うっていうか、それがすごい重要なんですよね。漫画描くときに」

－２０１１年、世界的なファッションブランドのディスプレイに荒木作品が。ファッション雑誌でも企画が組まれ、なんと表紙にまで。

－荒木さんが重視する項目は？
荒木飛呂彦先生「僕の場合はお父さんとお母さんの関係が性格みたいなものに繋がっているようにいつもしているんです。そういうふうに、流れっていうか、因果関係って言うんですかね。そういうのを重要としている」

-漫画とアート。幼い頃、寝る前の読書は、漫画か美術全集だったという荒木さん。アートから様々なヒントを得てきました。

荒木飛呂彦先生「いろんな絵があるじゃないですか。なんでこんな絵描くんだろうとか、自分では考えられない世界とか、そう言うのが好きで。僕はゴーギャンていうのは、すごい好きで。好きって言うか子供の時から、このなんか華やかな感じ」
－衝撃的だったのがゴーギャンの色彩美
－この絵、地面が茶色ではなく、ピンク色です。

荒木飛呂彦先生「ピンクでもいいんだと思ったのが、すごい楽しくなってきたというか描いてて。この絵は地面ピンクにしているんですよね」
『空は青じゃなくて黄色というか』
荒木飛呂彦先生「黄土色っていうか」

荒木飛呂彦先生「こういうふうな色のパワーというか組み合わせのパワーっていうか、そっちのが楽しいっていうか」
『なんかおかしいっていうより、これだから世界観が新しく作られている・・・』
荒木飛呂彦先生「そうですね」

荒木飛呂彦先生「今作っている自分の漫画っていうのは、いいものになるかっていうのはすごい未知なるものですよね、これから創っていくっていうものは。でも、こういうので勉強していくっていうことは、美の基本っていうか、その中に何か大切なものがあるんですよ。だから、そのへんを読み取るっていう意味でも、昔の人はやっぱり偉大なんですよね。なんかしらね、アイデアがあるんですよ」
－漫画は過去の名作の上に生み出されているんですね。

『これ、見たことあるわ。もののけ・・・なんとかっていうやつでしょ』
－違います・・・アートなんです。

－鹿の顔はフリーダ自身。度重なる大手術と夫の浮気による苦しみを糧に生まれた作品なんです。

－みんなの作ったキャラクターの発表


(みんなのキャラクターを見て、荒木先生の作ったキャラクター一通ちゃんを披露したあとに)
荒木飛呂彦先生「身上調査書を書いているとき楽しくないですか？」
『楽しい』
荒木飛呂彦先生「漫画を描いている時に一番楽しい時がそこなんですよね」
『やっぱりこれだけしっかり考えると、ブレずに自分のイメージを固定して漫画が描けるので結構短時間で、今までだったらこの時間内でここまで進まなかったと思うんで、すごく描きやすかったです』
荒木飛呂彦先生「お役に立てていただいて、漫画描いてまた貢献していただけると僕は嬉しいです」

－キャラクターが生きづいて物語が動き出す感覚、みんな実感できたかな？