自民党の高市早苗氏発言へ批判が集中しているが、「原発事故死者」は存在するのか?

自民党の高市早苗政調会長は17日、神戸市で講演した際に、原発再稼働をめぐり「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」とし、「原発は廃炉まで考えると莫大(ばくだい)なお金がかかるが、稼働している間はコストが比較的安い。エネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする」と発言したと東京新聞が報じています。
時事通信は「原発事故で死亡者が出ている状況ではない」として自民党はじめ、民主党などの野党から批判の声が上がっていると18日に報じています。

民主党の細野豪志幹事長(「震災関連死」が1400人近くに上ると指摘した上で)「この数字を踏まえることができない人は政権を担う資格がない。与党の政調会長失格だ」
海江田万里代表「自民党幹部の発言には、命を軽んじる発言が多く見られる」
日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)「死亡者が出ていなくても、精神的被害など計り知れない被害がある。今の日本では原発推進は目指すべき道ではない」
みんなの党の江田憲司幹事長「高市氏は即刻、政調会長、政治家を辞めるべきだ」
共産党の市田忠義書記局長「高市氏は福島県民の前で(同じことを)言えるのか。こんな人物に政党幹部を務める資格はない」
自民党の小泉進次郎青年局長「被災者の立場、苦しい環境に思いをはせ、国の責任を踏まえた上で発言しなければならない」
自民党の溝手顕正参院幹事長「人が死ぬとか死なないということと(再稼働問題を)一緒にすることはない」
公明党幹部「被災者の実態が分かっていない」

「原発事故で死亡者」は何人いるのか。

まず最初に「原発事故(福島第一原子力発電所事故)」の爆発や倒壊、放射能の被爆による死者はいません。
福島第一原子力発電所の4号機タービン建屋内の地下室で2人の作業員の遺体が後に見つかっていますが、これらの方も津波により溺死しています。

東京新聞は2013年3月11日に、福島第一原子力発電所事故による放射性物質拡散による避難をした際に、避難場所で亡くなるなどした死者を「原発関連死」と表現し、その死者数を789人としています。

ちなみに東日本大震災における震災被害者の死者数は警視庁の2011年発表では15883人と行方不明者2671人、避難場所などでの震災関連死の死者数は、復興庁の2013年3月31日の調査結果の発表によると1都9県で合計2688人とされています。
警視庁によると、東日本大震災の犠牲者の死因は津波に巻き込まれたことによる「溺死」がほとんど(90.6% 14308人)であるとされています。

東日本大震災の犠牲者の死因は津波に巻き込まれたことによる「溺死」がほとんど(90.6% 14308人)である

「原発事故による死亡者」と「震災被害死者・震災関連死者および原発関連」は別にして考えなくてはいけない

民主党の細野豪志幹事長は自民党の高市早苗政調会長の「原発事故による死亡者は出ていない」という発言に、「与党の政調会長として失格だ」と批判した上で以下のように発言しています。
「おそらく高市政調会長には、原発事故を起こしたという当事者意識がないんだと思いますね。与党の政調会長としては失格だと思いますね」
「この数字を踏まえることができない人は、政権を担う資格はないと思う」

まず、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故は民主党政権下で起き、「震災被害死者・震災関連死者および原発関連」は民主党政権下の救助や復興支援の状況で起きている事を忘れてはいけません。
また、民主党の細野豪志幹事長こそ「原発事故を起こしたという当事者意識」を忘れて自民党及び高市早苗政調会長を批判しているように見えます。

高市早苗政調会長は18日、以下のように説明しています。
「誤解されたのならしゃべり方が下手だったかもしれない」
「被曝(ひばく)で直接亡くなった方はいないが、安全基準は最高レベルを保たないといけないと伝えたかった」

野党を始めとした政治家やマスコミにおいても、選挙前から政治家の言葉狩りを開始しています。
政府や与党の政治家はそれらに注意しながら喋らなくてはいけないのは当然かと思いますが、それにしても自分たちの見解を証拠に基づいて述べずに揶揄したり、日本の国益にかなわない批判が目立ちます。
つい最近ですと、日本維新の会の橋下徹市長の「慰安婦問題」の発言に対する政治家やマスコミの批判が例に挙げられます。

「原発事故」を飛躍した解釈で「関連死」も含めた批判や、企業や市民の努力で電気が足りている状況や、燃料費高騰による電気代の値上がりを踏まえたエネルギー政策は別に考えなくてはいけない課題です。

まだ避難民もおり復興も進まない被災地の状況がありますが、避難民や被災地を人質にしたり原発事故を政争の具にした政界論争にするのは、そろそろやめてもらいたいものです。
それこそ、被災者や被災地を置き去りにした議論であり、復興にはなにも役に立たないものです。

2013/06/18
東京新聞:「福島事故で死者なし」 自民・高市氏が原発再稼働主張:政治(TOKYO Web)東京新聞:「福島事故で死者なし」 自民・高市氏が原発再稼働主張:政治(TOKYO Web)
Ceron.jp – 東京新聞:「福島事故で死者なし」 自民・高市氏が原発再稼働主張:政治(TOKYO Web)Ceron.jp - 東京新聞:「福島事故で死者なし」 自民・高市氏が原発再稼働主張:政治(TOKYO Web)
野党、高市氏の辞任要求=自民からも批判 (時事通信) – Yahoo!ニュース野党、高市氏の辞任要求=自民からも批判 (時事通信) - Yahoo!ニュース
民主・細野幹事長「与党の政調会長失格だ」民主・細野幹事長「与党の政調会長失格だ」
高市氏が「原発事故で死者いない」 与野党から批判 – SankeiBiz(サンケイビズ)高市氏が「原発事故で死者いない」 与野党から批判 - SankeiBiz(サンケイビズ)

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置(平成24年3月10日) (PDF) 警察庁緊急災害警備本部平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置(平成24年3月10日) (PDF) 警察庁緊急災害警備本部
2 行方不明者、死者への対応2 行方不明者、死者への対応(警視庁)

復興庁 | 「死者数」検索結果復興庁 | 「死者数」検索結果
復興庁 | 東日本大震災における震災関連死の死者数(平成25年3月31日現在)[平成25年5月10日]復興庁 | 東日本大震災における震災関連死の死者数(平成25年3月31日現在)[平成25年5月10日]

図録▽東日本大震災の男女・年齢別死者数図録▽東日本大震災の男女・年齢別死者数

2 行方不明者、死者への対応2 行方不明者、死者への対応

2011/06/14
“地震被害情報(第169報)” (PDF) (プレスリリース), 経済産業省原子力安全・保安院
地震・津波による死者 2人

・死亡2名(地震発生後から東京電力(株)の社員2名が行方不明となり、捜査を継続してきたが、3 月 30 日午後、4号機タービン建屋地下一階において当該社員2名が発見され、4 月 2 日までに死亡が確認された。)

2012/02/05
(cache) 573 deaths ‘related to nuclear crisis’ : National : DAILY YOMIURI ONLINE (The Daily Yomiuri)(cache) 573 deaths 'related to nuclear crisis' : National : DAILY YOMIURI ONLINE (The Daily Yomiuri)

573 deaths ‘related to nuclear crisis’
The Yomiuri Shimbun

A total of 573 deaths have been certified as “disaster-related” by 13 municipalities affected by the crisis at the crippled Fukushima No. 1 nuclear power plant, according to a Yomiuri Shimbun survey.

This number could rise because certification for 29 people remains pending while further checks are conducted.

The 13 municipalities are three cities–Minami-Soma, Tamura and Iwaki–eight towns and villages in Futaba County–Namie, Futaba, Okuma, Tomioka, Naraha, Hirono, Katsurao and Kawauchi–and Kawamata and Iitate, all in Fukushima Prefecture.

These municipalities are in the no-entry, emergency evacuation preparation or expanded evacuation zones around the nuclear plant, which suffered meltdowns soon after the March 11 disaster.

A disaster-related death certificate is issued when a death is not directly caused by a tragedy, but by fatigue or the aggravation of a chronic disease due to the disaster. If a municipality certifies the cause of death is directly associated to a disaster, a condolence grant is paid to the victim’s family. If the person was a breadwinner, 5 million yen is paid.

Applications for certification have been filed for 748 people, and 634 of them have been cleared to undergo screening.

Of the 634, 573 deaths were certified as disaster-related, 28 applications were rejected, four cases had to reapply because of flawed paperwork, and 29 remain pending.

In Minami-Soma, a screening panel of doctors, lawyers and other experts examined 251 applications and approved 234 of them. The panel judged two deaths were not eligible for certification and 15 were put on hold.

“During our examination of the applications, we gave emphasis to the conditions at evacuation sites and how they spent their days before they died,” a city government official said. “However, the screening process was difficult in cases when people had stayed in evacuation facilities for an extended time and when there was little evidence of where they had been taking shelter.”

(Feb. 5, 2012)

2013/03/11
原発関連死789人 避難長期化、ストレス 福島県内本紙集計:社会(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013031190070031.html?ref=rank

東京電力福島第一原発事故に伴う避難やストレスによる体調悪化などで死亡したケースを、本紙が独自に「原発関連死」と定義して、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも七百八十九人に上ることが分かった。死者・行方不明者一万八千五百四十九人を出した東日本大震災から十一日で二年。被災三県のうち福島では、宮城、岩手よりも多くの人が今も亡くなり続けている。原発事故は、収束していない。(飯田孝幸、宮畑譲) 
 
地震や津波の直接の犠牲者だけでなく、震災や事故後の避難中などに亡くなった人に対し、市町村は「震災関連死」として災害弔慰金(最高五百万円)を給付している。福島では二十二市町村が計千三百三十七人(十日現在)を関連死と認定。二十市町村はこのうちの原発事故に伴う避難者数を把握しており、本紙で「原発関連死」として集計したところ七百八十九人に上った。南相馬市といわき市は把握していない。
 
南相馬市の担当者は「事故後、市全域に避難指示を出した。震災関連死と認定した三百九十六人の大半は原発避難者とみられる」と話しており、これを合わせると原発関連の死者は千人を超えるとみられる。
 
二百五十四人が原発関連死だった浪江町では、申請用紙の「死亡の状況」欄に「原子力災害による避難中の死亡」という項目がある。町の担当者は「全員がこの項目にチェックしている。自殺した人もいる」と話す。
 
震災関連死の認定数は、福島より人口が多い宮城で八百五十六人(八日現在)、岩手が三百六十一人(一月末現在)で、福島が突出している。復興庁は「福島は原発事故に伴う避難による影響が大きい」と分析している。
 
認定数の多さだけではなく、影響が長期に及んでいるのも福島の特徴だ。震災後一年間の震災関連死の認定数は福島が七百六十一、宮城六百三十六、岩手百九十三。その後の一年の認定数は福島が五百七十六、宮城が二百二十、岩手が百六十八。今も申請は続き「収束が見えない」(浪江町)という状況だ。

2012/07/27
原発事故で600人以上の死者をもたらしたのは放射能ではない | 池田信夫 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト原発事故で600人以上の死者をもたらしたのは放射能ではない | 池田信夫 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

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