美容師が考える「美容師さんと理容師さんが同じお店で働けない理由」

ガジェット通信で「美容師さんと理容師さんが同じお店で働けない理由」についての記事が出ていますが、美容や理容の専門の人を交えないで話しているからか、勘違いされそうな誤解の多い記事になっているようです。
前提が1000円カットの話があるようですが、出来ればこういった話は、専門の人や今回の場合美容や理容の関連の人を交えてお話をして欲しいと思います。

【誰が得なの?】美容師と理容師が一緒に働くと事故が起きる? 不思議な規制の謎に迫る – ガジェット通信

散髪にまつわる規制の話、3回目です。前回は10分1000円カットつぶしの条例が各都道府県に広がっている問題についての話でした。今回は、美容師さんと理容師さんが同じお店で働けない理由について。

以下に気になる箇所の私なりの解釈を添えておきます。
あくまでいち美容師の考えです。
法的解釈や専門的な問題は、もっと詳しい人に聞いたほうが正確ですので、そうしたことを踏まえて宜しくお願いします。

『美容院では理容師さんは働いちゃいけないってことになっていて』
今はどうか知らんが扉が二つあれば理容室と美容室両方同時に出来た。
もともと私の父親は理容師から美容室に転向したので、当初(35年前)は理容用と美容用の扉が二つあるお店だったそうです。
理容所と美容所の許可を受けるためには条件の一つとして扉がそれぞれ必要だったということなんでしょうね。

『もともと理容師法と美容師法というのを分けて、縄張り争い』
何度か理容と美容を一緒の免許にしようという話はあったが、どちらかというと理容の方の反対が多いと聞く。理由は料金や休日の競争になるから。
理容組合に所属するお店は料金や店のお休みを同じにしなくてはいけないそうです。(美容室にはそういった取り決めはありませんので自由です。)
この方は「1000円カット」の話が前提だからこういう話をしているのかもしれませんが、「1000円カット」を問題視しているのは理容組合ではないでしょうか。
美容室は特に縄張り争いという話を聞いたことがありません。

『理容師と美容師が一緒に働けない理由は「事故につながりかねないから」』
いいえ、法律上の問題です。
美容師もしくは理容師はそれぞれ美容と理容を業としているという法の前提があるので、互いの技術に介入しないというかしてはいけないのです。
例えば美容師法に置いて美容師とは「厚生労働大臣の免許を受けて美容を業とする者」であり、「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」
理容とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整える」ことであり、「理容師の免許を受けた者でなければ、理容を業としてはならない。」

『カットの技は、学校では習ったものではない?』
確かにその問題はあったが、最近は学校でも補えるようにカットも教えますし、国家試験でもカットの実技試験があります。
それから、カットのカッテイング技術というのは、色んなお客様の髪質や骨格などにあわせて行うものです。
現在、いろんな髪型がありますし、髪質が一定なウイッグだけで練習しても、いきなりお客さんの髪は出来ないのです。

よく勘違いされているのですが、今は理容室でもロッドを使うパーマをしていますし、美容室でも女性に対する顔剃りは認められています。
理容室で美容の業でしていないものが分かりませんが、美容室でアイロンパーマは現在でも行っていません。

(うちの店が)美容室と理容室をひとつの店でしなくなった理由
最後に、理容師から美容師になった父親に聞かされた体験のお話をしておきます。

先にも書きましたが、父親は最初理容師でした。
ある日、店を出す際に父は理容師から美容師になったのですが、当初、理容と美容のお店をひとつの店でしていました。

しかし、ここで理容の同業者が怒鳴りこんできたり、看板やハサミを盗まれたり、とうとうバイクのホイールのネジを盗られて危うく父は事故にあいそうになりました。
この時、警察を呼ぶ騒ぎがあったようですが、その理容室の息子の親が怒鳴りこんできたりしたそうです。
ゆえに目撃者もいたのですが、訴えを取り下げて、お店も美容室だけにしたそうです。

私は個人的に、美容師と理容師は同じ免許でもいいと思っていますし、美容師の人は同じ考えの人も多いと思います。
しかし、理容関係の人の中には、それをすると仕事を取られてしまうというプライドのようなものがあって、今も美容師と理容師は別々の国家資格の免許になっています。

私は美容室にも理容室にも良いものがあると思いますし、現状のままでもかまいません。
そうした理容室や美容室を選ぶ権利は利用者のお客様にあります。

1000円カットの問題点
私の個人的な考えでは、料金をいくら安くするのも構わないと思います。
安い店があってもかまいません。
ご飯を食べに行くところが牛丼屋さんなのか洋食屋さんとか高級レストランなのかの違いです。選ぶのは利用する人であって、美容室も理容室も一種のサービス業だからです。
ただし、それが法の元で正しいことをしている事が前提であり守らなくてはいけません。
いくら利用者が便利で格安であっても、美容師法や理容師法における衛生法規や規定・規格を無視した営業によって行うのは問題です。
法律は規制のためにあるのではなく、あくまで利用者を守るためにあるということを知ってほしいと思います。

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