トリミングサロンに預けた飼い犬が、施術していた元トリマーによって怪我をさせられて死亡した事故をめぐり飼い主らが起こした裁判で元トリマーに約40万円の支払いを命じる判決が出たというニュースを読んだのですが、なぜそのような状況になったのか理解に苦しみます。
事故当時トリミングサロンの隣にあった動物病院に最初飼い主さんから電話があり『ちょっとけがをさせたので、隣の病院に連れて行って治療させてもいいですか』という連絡があったそうで、ここでの飼い主さんはちょっとの怪我という認識だったようです。
次に治療を担当した獣医師さんの話で『ちょっとの怪我』という認識で伝わっていたのと、病院が混み合っていたため後回しにしてほしいと答えていたそうで、ここのやり取りの遅れが生じていたように見えます。
そして獣医師さんの話では『うちの看護師さんがちょっと様子を見に行ったら、血だらけのワンちゃんをティッシュで押さえながら、まだカットしていたという状況ですね』とのことで、確認に行かれた看護師さんによってようやく異常な状況が確認されて治療に入ったようです。
出血の状況がどの程度だったか詳細がわからないのですが、獣医師さんの話で『見たことがないような傷だった。首の骨まで到達している深い傷というのが、最終的に手術を進めていくうちに分かった』と話しており、喉の傷は縦方向に約3センチという食道を貫通するほどの刺し傷だったそうです。
この3センチというのを定規で見てもらうと分かるのですが、思ったより深く刺されています。
わたしは美容師なのでハサミの取り扱いをするのですが、ハサミが刺さる角度にあてがうということは考えられないのです。
ハサミは必ずカットする断面にハサミの側面が向くように扱います。
ハサミが刺さったのであれば刃物の先が犬に向いていた状況で、急に犬が動いたのか、よそ見して(?)刺しにいったのかしないと、刺さらないと思うんですね。しかも3センチというのは相当力が加わらないと無理です。
元トリマーは飼い主らに対し、「顔の部分を上向きにカットしていたところ、ティファニーが急に伏せの姿勢を取り、首が傷ついた」という内容の説明していたそうですが、そんな事ありうるだろうかというのが、わたしの個人的な意見です。
別のトリマーの方の意見がありましたが、顔周りを切るときは片方の手で顎を持つことで固定させたり動いた際の反応も分かるから事故を防げるとしています。そういう施術の方にも問題があったのでしょうか。
そして不思議なのはそんなに刺さったら、刺した本人も感触が分かっていたのではないかと思うんですね。
ハサミを扱うときはハサミの先に集中して見ているわけですし、犬だっていたがるはずです。
そして刃物が3センチも刺さるほどの刺し傷があり、血を拭きながらまだ施術をしていたというのが理解できません。
裁判の中で元トリマーは怪我をさせたことは認めたものの、死んだのは獣医師の対応に問題があったという主張をしていたそうです。
大阪地裁は、「獣医の治療に過失はなく、トリミング中の過失によるけがで死亡した」と認定した一方で「事故の発生を予見することはやや困難とも言える」などと指摘し、原告の飼い主家族3人が求めていた350万円の賠償額には及ばない39万6000円の損害賠償の支払いを被告の元トリマーに命じました。
ペットは色々な場面で「もの」として取り扱われがちなのですが、飼い主にとってペットは家族であるわけで、そういった事故が起きないようにしてほしいものです。
ところでペットのトリミングをするペットサロンでは、ペットに怪我をさせてしまう事故がわりと起きているようで、怪我をさせた具合によっては治療費を払ったり、施術自体の代金を支払わなくていいなどの規約が各サロンに寄って定められているようです。
ただ、軽微な怪我の場合には治療費を支払わないといった内容を見かけたのですが、怪我は治るからみたいなことも書いてあり、大丈夫なのかそれってなりました。
人間相手だったら傷害事件にもなりかねないのに、ペットだとそういう扱いになってしまうんですね。
それから調べているうちに、ペットサロンで猫の施術をしている際に、『猫の尻尾の一部を切断した』というペットサロンの裁判の事例を見かけましたが、これも請求が約25万円に対して、4万5千円という賠償が命じられていて、ここでも値段でどうにかなる訳では無いにしても、ペットに対する法の扱いが『もの』なんだなぁという印象を受けました。
動物を扱う以上、予見できないことも起きるというのはわかります。
わかりますが、
ペットが家族として扱われる中でのこのような事故は避けるべきであると感じます。事件の経緯からは、飼い主さんや治療担当の獣医師が事故の重大性を最初に理解せず、対応が遅れたことが影響しているように思われます。
元トリマーの説明としては、ハサミが急に犬に向いたという状況が理解しづらく、その施術の過程において犬が急に動いたか、またはトリマーが判断ミスをした可能性が考えられます。その一方で、ハサミの刺し傷が深刻であるにもかかわらず、施術が続けられていたことも疑問視される点です。
裁判の結果として、獣医師には過失は認められず、元トリマーには39万6000円の損害賠償が命じられました。この結果は、元トリマーがけがをさせた責任を認めつつも、事故の問題を獣医師のせいにした姿勢には不誠実さを感じました。。
トリマーは、事件において誤ってけがをさせた責任を認識し、これを踏まえて今後の行動を考える必要があります。まず、同様の事故を未然に防ぐためには、施術時には動物の安全を最優先にし、慎重な姿勢を持つことが求められます。訓練や指導を受け、安全な施術手法を身につけることも重要です。
最後に、ペットサロンやトリミング業界全体において、事故が発生した際の適切な対応と、ペットに対する法的な取り決めが整備される必要があります。ペットは家族であり、その安全と福祉を保護するためには、業界全体での基準や法的な規制が必要です。また、飼い主もペットサロンを選ぶ際には、施術に対する信頼性や安全性を重視することが重要です。
ペットのトリミングやケアに関わるすべての関係者が、ペットの安全と幸福を最優先に考え、そのために適切な手段を講じることが求められます。