宮崎駿監督によるスタジオジブリ最新作「風立ちぬ」(7月20日公開)に、アニメ映画「ヱヴァンゲリヲン」庵野秀明監督(52)が声優として参加するそうです。庵野秀明監督は零戦を設計した実在の技師で主人公の堀越二郎の声優を担当することになります。
庵野秀明監督は当初オファーに戸惑ったそうですが、1984年のジブリ映画「風の谷のナウシカ」で原画を担当して以来、師と仰ぐ宮崎駿監督から「是非に」と言われ快諾したということです。
起用された理由として、〔1〕早口である〔2〕滑舌がよい〔3〕凛としている-などの主人公のイメージにピッタリだったといいます。
【風立ちぬ 公式サイト】
個人的に今までの経緯とかお話を見聞きするに、宮崎駿監督と庵野秀明監督は仲が悪いのかなぁと思っていましたが、現在、愛媛県美術館で開催されている「館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」」にて公開中の『ヱヴァ:Q』と同時上映され『巨神兵東京に現わる』のように、作品を通じて互いに認め合うところがあるのですね。
庵野秀明監督が1983年当時にアニメ「超時空要塞マクロス」でメカデザインを担当していたのを見た宮崎駿監督が、「風の谷のナウシカ」の巨神兵の原画を担当させた経緯についても、さながらエヴァンゲリオン第壱話の父子対面のシーンのようであったという話も伝えられています。
また、庵野秀明監督は1996年にスキゾ・エヴァンゲリオンの中で、宮崎アニメやスタジオジブリへの批判の内容を語っています。
宮崎駿監督も1997年に「風の帰る場所」の中でエヴァンゲリオンの感想を求められ「いや、3分と観られないですね。観るに堪えないですね」と語るなど批判をしていました。
同じく1997年にアニメージュ別冊「宮崎駿と庵野秀明」にて二人の対談というか対決があったようですが、
その後、2001年には互いに宮崎駿監督『生き永らえて40代に入るんだったら、『エヴァンゲリオン2』を作り続けるか、そうじゃなくて、誰かのために映画を作るか、その2つの道のどっちかを選ぶしかないって。そうしたら、実写に逃げやがって、あの野郎。あれ、逃げですよ。ただの』 庵野秀明監督『必ず宮さんの分身みたいなキャラクターが出てくるんですけど、今回は釜爺ですよね』といったように、作品を通じた批評をしていました。
その後、二人がどうなったかがどうなったかは、私たちだけのひみつ。
2011年7月2日と3日、東日本大震災の被災地を訪れサイン会をする宮崎駿監督と庵野秀明監督
【宮崎駿&庵野秀明:被災地訪問し一足早くジブリ新作試写 観客から歓喜の涙 – MANTANWEB(まんたんウェブ)】
鈴木プロデューサーによると、被災地にはNGOのピースウィンズ・ジャパンの要請で、津波被害の大きかった宮城県気仙沼市と岩手県陸前高田市で試写会を開いた。映画「コクリコ坂から」の試写という“お土産”のほかに「となりのトトロ」のイラストが描かれた色紙を大量に印刷して持参し、サイン会を行ったという。鈴木プロデューサーは「お客さんがあまりにも多いからサインを宮崎駿が1人で全部こなすのは大変な作業で、せっかく庵野が来ているから『トトロの下にサインをしろ』と言ったら『僕はトトロは関係ありません』と抵抗を示したんです。でも『新幹線代はおれが持っているんだから新幹線代くらい働け』と言ったんです(笑い)」と語り、総出でサイン会をしたことを明かした。
【庵野秀明の「風の谷のナウシカ」回想録 « スタジオジブリ非公式情報サイト【ジブリのせかい】 宮崎駿・ジブリ・新作『風立ちぬ』情報】
宮崎駿監督-「Cut」9月号の中で
「でも今年いっぱいぐらいは、地を這うようにして進むだろうと、その間に絵コンテのBパートぐらい上げなきゃって思うんだけど(笑)。ほんとに震災のあとね。堂々巡りが続いて。庵野も堂々巡りしているんですよ、『エヴァンゲリオン』の最終話を巡って。とてもよくわかるんですよ。だけど、傷を舐め合ったってしょうがないんでね」
(トトロの2について)
「俺、そういうのもありかなって言うと、『ええー!?』とか実に冷たい反応が帰ってくるんです。『おまえら何も作れないくせに何言ってんだこの野郎!』と思うんだけど」
「『トトロ』の2ってのはね、美術館作品で、『めいとこねこバス』ってのでやってしまいましたけど。でも台風の一日って形ではめこむと、僕は出来ると思っているんですよ。結構いい作品になると思いますけど」
宮崎駿 庵野秀明 対談
何度も引退の話が出ていた宮崎駿監督ですが、今度の「風立ちぬ」でも、きっと次が最後の1本になるとされています。
【ジブリ最新作、主人公声優に「ヱヴァ」庵野監督 (サンケイスポーツ) – Yahoo!ニュース】
【主演は庵野秀明、宮崎駿最新作「風立ちぬ」で、大物監督が声優初挑戦 | アニメ!アニメ!】
■ 堀越二郎役:庵野秀明さんのコメント
「突然ある日、鈴木(敏夫)さんから「二郎の声をやってほしい」と電話がかかってきました。”まぁ無理だろう”と思いましたが、無理とはいえ宮さん(宮崎駿)から是非にということでしたし、まずはオーディションをして本当にいけるかどうか確認してみようということになりました。
オーディションが終わると、しばらく見たことないくらいニコニコと満面の笑みの宮さんに「やって」と言われまして、”これはやるしかないんだろうな”と思ったのが正直なところです。できるかどうかは別にして、やれることはやりますけれど、そこまでです、ということで引き受けました。
ダメだったときは、僕を選んだ鈴木さんと宮さんが悪いんです(笑)。といいつつも、頑張ります。主役は初めてなので、シーンが多すぎてどこも大変だなあという印象です。もともと宮さんにオーディションで言われたのが「寡黙な男でセリフはそんなにないから」ということで。それを信じて引き受けたのですが、絵コンテ見たらびっくりですよ。ずっとしゃべりっぱなしだし、歌はあるわ、フランス語もドイツ語もあるわで、完全にだまされた!って感じです(笑)。
役作りは、素人なのでやっても無駄ですから、意図してやっていません。素のままぶつけて宮崎さんが気に入ればいいし、違えば直していこうと思っていました。役柄についてはあまり説明がなく、注文もそんなにありませんでした。アフレコ2日目くらいから、宮崎さんがニコニコと、とても喜んでいる様子で。それだけでよかったなと思います。この映画の中に出てくる堀越二郎さんと僕自身が共通するのは”夢を形にしていく”仕事をしているところだと思います。そこはすごくわかるし、自分の実生活にも通じるところがあります。
素の自分のままアフレコをやったところを宮さんが喜んでいたので、やっぱりそうなんだなと。アニメや映画を作るということと飛行機を作るということは、作るものは違えども、夢を形にすることは同じ仕事なのだと強く思いますね。2時間を超える長編をつくるというのは、体力的にも精神的にも本当に大変な作業です。ラストシーンは、正直感動しました。」
■ 鈴木敏夫プロデューサーによる起用理由
「役者さんでは演じることのできない存在感です。映画を設計する監督と飛行機の設計士、作るものは違うが共通点もあると思いました。こじつけですが(笑)。」