東京理科大学総合研究機構の辻孝教授(再生医工学)や豊島公栄プロジェクト研究員らのチームなどのグループは、毛を作る器官の元となる幹細胞を作成し、皮膚に埋め込むことで何度も生え変わる正常な毛を生やすことにマウスの実験で成功させ、その成果をイギリスのオンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表しました。
東京理科大学では昨年の2011年2月に、毛の生えていないマウスに毛包を作る幹細胞を移植し毛を再生することに成功したと発表していましたが、この時のマウスが1年間生き続けるまで観察を続けたということでしょうか。
【抜け毛や白髪の原因で髪の幹細胞生成に必要なタンパク質が解明 | CUTPLAZA DIARY】 (東京医科歯科大学)
【毛の再生治療、マウスで成功。脱毛症治療に応用 | CUTPLAZA DIARY】 (東京理科大学)
【米エール大学「発毛にスイッチ入れる物質」発見。発毛医療また一つ進展 | CUTPLAZA DIARY】 (アメリカのエール大学)
組織や器官に成長する幹細胞は通常、胎児から採取しないと器官の再生が難しいのですが、今回のヒゲを用いた実験では成熟したマウスからでも発毛器官が再生できたとのことです。
昨年の2月の発表によると『マウスのひげは体毛より太く、直径が0.05ミリ程度でヒトの毛髪に近い。再生した毛を電子顕微鏡で分析すると、自然の毛と同様に中心に毛髄、周囲に毛皮質があった。さらに自然の毛は生え替わることを繰り返すが、移植後の毛包も3カ月間、21日周期で生え替わりが続いた。』とのことです。
大人のマウスからヒゲの毛包の幹細胞を採取して培養し、生まれつき毛の生えないマウスの背中に移植したところ、7割のマウスが3週間後に毛が生えてきたそうです。また、毛は毛周期ごとに生え変わり、マウスが寿命で死ぬ1年間発毛機能は維持したとしています。
そして、色素を作る細胞を一緒に移植すると白い毛を黒や茶色にすることができたそうです。
これまで毛の移植では後頭部の皮膚組織ごと取り出し、髪の毛の毛包ごと植えつける移植手術はありましたが、皮膚ごと取り除いた後頭部は上と下の皮膚を縫い合わせることから、皮膚自体のリスクが出てしまいます。また、植えつけた髪の毛が再び生え変わったり移植そのものがうまくいく確率が7割程度とのことです。
これから髪の毛の幹細胞による再生治療の技術が進み、早い時期に脱毛症治療に応用がされるようになるといいですね。
【発毛:幹細胞移植で何度でも生える…マウスで実験成功- 毎日jp(毎日新聞)】
毛を生みだす器官の幹細胞を培養して皮膚に移植し、同じ太さや硬さの毛を何度も生え変わらせることに、東京理科大などのチームがマウスの実験で成功した。18日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表した。
毛は皮膚に無数にある「毛包(もうほう)」という器官で作られ、体表まで伸びる。毛が抜けても毛包があれば、同じ場所から生える。
辻孝・東京理科大教授(再生医工学)らのチームは、大人のマウスから毛包の幹細胞を採取して培養し、生まれつき体毛のないマウスの背中に移植した。その結果、7割のマウスに3週間後に毛が生え、元のマウスと同様に3?5ミリまで伸びた。毛の硬さや縮れなどの特徴も同じだった。自然の毛のように、周期的に生え変わった。
移植する幹細胞の数を増減させることで、発毛の密度や本数を変えた。色素に関わる幹細胞を加えて培養し、白い毛を黒や茶にすることもできた。
【幹細胞移植で毛が生えた 何度も再生 東京理科大チーム – MSN産経ニュース】
毛をつくる器官のもとを幹細胞から作製して皮膚に埋め込む手法で、何度も生え替わる正常な毛を生やすことに、東京理科大の辻孝教授(再生医工学)や豊島公栄プロジェクト研究員らのチームがマウスの実験で成功し、成果を17日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。
組織や器官に成長する幹細胞は通常、胎児から採取したものでないと器官の再生が難しいが、ひげの幹細胞を使った実験では成熟したマウスからでも発毛器官が再生できた。辻教授は「自分の細胞を培養して使う、新しい発毛治療の開発が期待できる」と話している。チームは今後10年程度で臨床応用を目指す。
毛は皮膚に無数にある「毛包(もうほう)」という器官でつくられ、そこから体表まで伸びてくる。チームは毛の周辺にあり、毛包になる能力がある2種類の幹細胞を分離し、毛包に分化しやすい形に組み合わせた。これを生まれつき体毛のないマウスの背中に移植し、発毛を確認した。生え方は自然の毛並みに近かった。
毛は周期的に生え替わり、マウスが寿命で死ぬまでの約1年間、発毛機能を維持したという。
【脱毛症治療に光…幹細胞移植で無毛マウスが発毛 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)】
マウスの毛の周辺から取り出した2種類の幹細胞を移植することで、生まれつき毛のないマウスに毛を生えさせることに東京理科大学などが初めて成功した。
移植した体毛、ひげの幹細胞はそれぞれ体毛、ひげとして定着した。自らの細胞を用いる脱毛症治療に道を開くもので、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に18日発表する。
同大の辻孝教授、豊島公栄研究員らは、毛組織のもとになる「毛乳頭」と、皮膚になる「上皮性」の二つの幹細胞に着目。互いに成長に必要な物質をやりとりして、毛を作るとされる。
チームは、毛のあるマウスの体毛やひげ周辺の組織から2種類の幹細胞を取り出し、足場となるコラーゲンの中で塊を作った。この塊を、毛のないマウスに皮下移植したところ、約1か月後に毛が生えた。約10か月間、毛は何度も生えかわり、機能も通常の毛と変わらなかった。
いろいろな細胞の元になる幹細胞を組み合わせて髪の毛が生えてくる皮膚の中の器官を再現することに東京理科大学のグループがマウスを使った実験で成功しました。
抜け毛の根本的な治療法につながる可能性があると期待されています。東京理科大学総合研究機構などのグループは、なくなった髪の毛を再生させるため、いろいろな細胞の元になる幹細胞のうち、毛のまわりにある「上皮性幹細胞」と「毛乳頭細胞」に注目しました。
そして、この2種類の幹細胞をマウスのひげの周りから取り出して培養し、背中に移植した結果、ひげや髪の毛が生えてくる皮膚の中の「毛包」と呼ばれる器官ができたということです。
毛包からは実際にひげのような毛が伸びて周期的に生え替わり、色素を作る細胞を一緒に移植すると毛の色が黒くなったということです。
移植した幹細胞の量に比例して毛包の数を確実に増やすことができたことからグループでは、抜け毛の根本的な治療法につながる可能性があるとしています。
研究を行った辻孝教授は「人でも後頭部などに髪の毛が残っていれば、自分自身の細胞でもう一度、毛包を組み立て毛髪を作り出すことが可能になる。将来は治療に使えるようにしたい」と話しています。