マウスの実験で細胞に刺激を与えることで、様々な組織や臓器などを作ることが出来る「万能細胞(多能性幹細胞)」を作る新手法を発表したと理研発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)細胞リプログラミング研究ユニットの小保方晴子研究ユニットリーダーを中心とする研究ユニットと同研究センターの若山照彦元チームリーダー(現 山梨大学教授)、および米国ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授らの共同研究グループが発表しました。研究内容は英科学誌「ネイチャー」に掲載されました。
小保方晴子氏は、細胞外刺激による体細胞からの多能性細胞への初期化現象を刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency; STAPと略する)、生じた多能性細胞を「STAP細胞」と名づけました。
いわゆる万能細胞である「多能性幹細胞」は、再生医療や治療薬の開発に役立つとして、これまでにもES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)が研究されており、「STAP細胞」は「第3の万能細胞」といえるものです。
「iPS細胞」と「STAP細胞」の違いは、「iPS細胞」は作製に2~3週間かかるのに対し、「STAP細胞」は最短で2日程度で作ることが出来ます。これは「iPS細胞」が人の体細胞に未分化性を促進する転写因子と呼ばれるタンパク質を作らせる遺伝子を細胞へ導入する技術に時間がかかるのに対し、「STAP細胞」は(今回の研究ではマウスの)リンパ球を酸性溶液に短時間入れた後に培養をすれば初期化された細胞が出来るためです。
植物ではどの細胞でも成長因子を加えると様々な部分になることが出来る細胞ができるのに対し、人を含めた哺乳類動物では受精卵が分裂し多様な細胞に変わり、体細胞が分化を完了すると細胞の種類は固定されます。
今回の「STAP細胞」は体細胞を簡単に初期化する方法である上に、これまでES細胞やiPS細胞が作れなかった胎盤なども作れることから、様々な細胞や組織が作れる医療などの分野で期待されます。
そして「iPS細胞」と違い、遺伝子情報を操作しない「STAP細胞」はガン化の恐れが少ないとされています。
さて、今回の「STAP細胞」の研究ではマウスを使った段階の研究結果であり、一部報道ではアメリカで猿の骨髄移植の研究が始まっているというものもありましたが、人での実験はこれからの話しです。
「iPS細胞」は先行して研究され実際に人の患者に使用され始めていますが、ガン化しないような手法も研究がされています。
「STAP細胞」においては、これまでの「万能細胞」としての性能が人間でも得られるのかどうか、さらなる研究成果を待ちたいと思います。
また、朝のニュースで「STAP細胞」は胎盤が作れるという話に、はるな愛さんが食いついていましたが、技術的には出来ても、生命倫理的に使用してはいけない分野というものがあるはずです。
いろいろな医療への活用の可能性があるからこそ、この「万能細胞」の使用に関する法律などの仕組みについても作る必要があるでしょう。
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